エビデンスブログ vol.1『エビデンスレベルとは?』

こんにちは、エビデンスブログ編集長の丸尾勝一郎と申します。
本日より、歯科に関する最新のエビデンスを不定期に配信していきたいと思います。

できるだけ「最新」かつ「明日の臨床に役立つ」エビデンスを配信したいと思っています。

私の専門は“デジタル”・“インプラント”・“補綴”ですが、このエビデンスブログは私以外にも他の専門領域から数名の専門医が執筆していただける予定となっております。
ぜひご期待ください。

さて、記念すべき第1回のテーマは論文を解説する前にぜひとも理解しておいていただきたい “エビデンスレベル”についてお話ししたいと思います。

エビデンスとはすなわち、様々なジャーナル(学術雑誌)に掲載される論文や、学会が発表するガイドラインなどを指します。では、ジャーナルに掲載されている雑誌の結果や結論を全て鵜呑みにし、明日の日常臨床に活かしてよいのでしょうか?

答えは「否」です。

エビデンスには信頼性・信憑性に応じて“レベル”というのが存在します。
これをエビデンスレベルと言います。

例えば、私がインプラントの新しい術式を考案したとします。
その術式を50症例行い良好な結果が出たので、論文を執筆し投稿します。インプラントだとヨーロッパのインプラント学会EAOの機関誌であるJournal of Clinical Oral Implant Research (COIR)やアメリカのインプラント学会AOの機関誌である The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants(JOMI)といったジャーナルが有名ですが、そのいずれかにアクセプト・掲載されたとします。

しかし、この論文で発表された革新的な術式を鵜呑みにし、明日から臨床に取り入れて良いか?というと、「そのまま鵜呑みにして臨床に取り入れることは非常にリスクが高い」ということになります。

有名なジャーナルに掲載された論文なのに、なぜ臨床に導入してはいけないのでしょうか??
その疑問を紐解くためには「バイアス」という言葉を理解する必要があります。

「バイアス(bias)」とは偏見とか、先入観と訳される言葉で、統計学用語では「偏り」と言われます。

このエビデンスのレベルはこのバイアスをできるだけ排除されるほど、エビデンスレベルが高い、という評価になります。

先の例でいうと、私がおこなった50症例がすべて良好な結果が得られたことは下記のようなことが考えられます。
■たまたま偶然すべて上手くいった
■私の技術が他の臨床医と比べて飛び抜けて秀でていた
■失敗する可能性が高い患者さんを排除していた
■論文に載せるデータから失敗した症例を排除した

最後のものはデータの改ざんにあたるので、研究倫理的にも非常に問題があることですが、臨床データは基礎研究などと異なり再現性があるものではありませんので、著者がそう言い切ってしまったら、それ以上追求する手立てはありません。

したがって、このような症例報告(1症例の報告をケースリポート、複数の症例報告をケースシリーズといいます)はエビデンスレベルでも下から2番目という低いエビデンスレベルとなります。

ちなみに、エビデンスレベルで最も低いものは『Expert Opinion(専門家の意見)』と呼ばれるものです。
日本では、その道の大家が「この時はこうするべき!」というと、ついつい追従しがちな文化がありように思います。しかしながら、もしその意見がエビデンスに裏打ちされていなかったら、それは非常に信憑性が低くバイアスが大きいため、臨床に取り入れることは非常にリスクがあると言えるでしょう。

では、どのようなエビデンスレベルの論文を読み、日常臨床に導入すれば良いのでしょうか?

第2回ではこの「臨床に取り入れるべきエビデンスレベル」についてご説明していきたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

【NEWS】
Dr.丸尾が主宰するスタディグループInterdisciplinary Team of Dentistry(ITD)は、歯科における様々な領域の専門医が集結し、その分野の最新情報をシェアし、切磋琢磨する勉強会です。歯科のサロンといった雰囲気で、どなたでも随時参加可能ですので、お気軽にご参加ください。
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【編集後記】
本日より開始したエビデンスメルマガは、1年くらい前から企画していました。英語が得意ではない日本人臨床家が論文を原文で読むことは非常に少なく、毎週末様々な場所で行われるセミナーに参加し、その情報を臨床に活かしていることにずっと違和感を感じていました。(私もセミナーで話させていただいている側なので批判しているわけではなく、違う知識の獲得の仕方があるのでは?と思っていたのです。)
また、英語の情報が成書として日本語訳されるとしても、おそらく1〜2年くらいのタイムラグがあります。(私がコミュニケーション委員を務めるITIのトリートメントガイドなどが最たる例ですね)そこで、できるだけ新鮮な形でエビデンスを紹介できないかと思い、このエビデンスブログを始めました。読者の皆様が、論文を読むことに慣れ、自分の力で最新かつ明日の臨床に役立つ情報をgetする力を身につけて頂ければと思っています。

【発行責任者】三軒茶屋マルオ歯科 丸尾勝一郎
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