エビデンスブログ vol.3『エビデンスレベルとは③』

こんにちは、エビデンスブログ編集長の丸尾勝一郎です。
第2回では、どのエビデンスレベルの論文を読めば良いかということについてお話しました。

さて、第3回は「論文の構成」についてお話したいと思います。

まずは論文の構成ですが、一般的に論文は

Title(題名)
Author(著者と所属)
Abstract(要旨)
Keywords(キーワード)
Introduction(緒言)
Materials & Methods(材料と方法)
Results(結果)
Discussion(考察)
Conclusion(結論)
Acknowledgement(謝辞)
Reference(参考文献)

といったパートから構成されます。
ではそれぞれ何を注意して読んでいけば良いか、ポイントを整理していきましょう。

【Title(題名)】
論文の内容を論文の内容を最も端的に示す部分。結果を書くこともあるが、基本的には何を調べたかを記載。タイトルに最後にエビデンスレベルを表示することも多い。

【Author(著者と所属)】
研究の主体と執筆を担った人がいわゆるfirst authorといって最初に名を連ね、firstとsecondには非常に大きな差がある。最後に名を連ねているのは、その研究の中で最も立場の高い人物が多いため、最後の著者を見て「〜〜(分野の著名人)のグループの研究」という言い方をすることもある。Corresponding authorは著者の中で研究などについての問い合わせの窓口になる人のことで、 first authorと同等くらいの価値がある。したがって大学の教授選などでは単純に論文数とは別に、firstが何本、 corresponding(俗にコレポンなんて呼びます)何本という形で評価される場合もある。いろんな大学や開業医が名を連ねている論文では、その関係性をうかがい知ることができる。細かく見ると以外に奥が深く、業界の政治も見えてくることがある。

【Abstract(要旨)】
論文が最も伝えたい内容を、著者が主観的な観点で簡潔にまとめたもの。重要な結果を端折っていることもあるので、全てを鵜呑みにすることは危険でもある。論文を深読みするかどうか、スクリーニングするために用いることが望ましい。

【Keywords(キーワード)】
論文が検索されるときにタグ付けされるためのキーワード。通常3ワードくらいで表記される。

【Introduction(緒言)】
研究テーマに関する歴史的背景やこれまでの発展の流れ、あるいは現状の課題などが記載される。このパートには、そのテーマの歴史的な論文が引用されていることが多いため、テーマについて文献的に深掘りしたい場合はこちらを参照にすると良い。また、なぜこの研究が必要なのかが語られ、このパートの最後の文章に「The aim (purpose) of this study is 〜〜〜」といった書き出しで<目的>が記載されるので必ずこれを確認すること。

【Materials & Methods(材料と方法)】
用いた材料や機器と実験方法および評価方法、統計手法などが記載される。過去に用いられた手法であれば、その引用文献も示される。用いた材料、機器などの写真や実験のタイムテーブルの図なども表示される。ある程度インパクトファクターの高いジャーナルでは厳しくレビュー(査読)されるためずさんな研究デザインはあまりないが、インパクトファクターの低いジャーナルでは研究デザインがナンセンスなものもあるので注意が必要。システマティックレビューなどで、論文の選択基準(inclusion criteria)や除外基準(exclusion criteria)記載されているため、ケースリポートなどを書く際はこの基準を参考にすればレビューで採用される可能性が高くなる。

【Results(結果)】
著者の主観が全くなく、客観的な実験結果のデータのみを示すパート。重要なデータは表やグラフなどにして読者にわかりやすく表示される。統計処理後の有意差なども記載されるので、論文の中で最も注視して見るべきパード。読者としては、この数値的データをよく吟味しこの客観的データが何を意味するのかを自分の頭を使って解釈することが重要である。

【Discussion(考察)】
なぜ、このような結果になったのか、妥当性を述べるパート。他の文献を引用・比較しながら、結果が符合した部分や相違した部分の理由を、著者の主観的な考察から述べているパートのため、すべてを鵜呑みにすることは危険である。自分が同じ分野で論文を執筆する場合は、熟読する必要がある。

【Conclusion(結論)】
Introductionで述べられた目的に呼応する結論を端的に述べるパート。将来的な研究の必要性・展望も述べられる。著者の主観的観点から語らており、必ずしも結果を全て網羅した結論ではない場合もあるので、注意が必要。

【Acknowledgement(謝辞)】
著者には名を連ねていないが、研究に携わってくれた人に対し感謝を述べるパート。企業からのサポートを受けている場合は、ここに記載されるので注意する必要あり。

【Reference(参考文献)】
文中で引用された論文のリスト。各雑誌によってフォーマットが異なるので、自分のプレゼンで引用する場合は統一する必要あり。

以上、今回は論文の各パートについて詳細に解説しました。
結果の部分を自分でしっかりと熟読し、自分の頭で研究結果の意義を考え、解釈することが非常に重要です。論文は、あくまで著者が主張したいことが優位になるような言葉の言い回しになりがちです。例えば、ある2つの術式の効果を評価し両者に差がなかった場合、「両者に効果の差はなかった」と記載するのと、「BはAという術式に匹敵する効果を示した」と記載するのでは、読者が抱くイメージも変わりますよね。
したがって、論文をつねに「批判的姿勢で」読むことが重要です。すべての分野とは言いませんが、自分が得意とする、あるいは自分が講演をする分野においては、自分なりの尺度をもって論文を批判的に読むリテラシーを身につけていただきたいと思います。

第4回の次回からはいよいよ、エビデンスメルマガの真髄、論文の解説がスタートしますのでぜひお楽しみに!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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【編集後記】
今年はたくさん講演させていただいたので、試しに数えてみたらなんと実に32回も講演をさせていただいておりました。お呼びいただきました先生には、この場をお借りしてお礼申し上げます。
実は、ここ数ヶ月デジタルに関する講演をしていて、受講者のある変化に気付きました。今年初頭の講演では、デジタルについての講演をしていても受講者が「ポカーン」としていたり、主催の方に「宇宙語が飛び交っている」と言われたり、デジタルに関するリテラシーがまだまだ不足していると感じざるを得ない場面に多く遭遇しました。ところが、今年の下半期を過ぎた時から、受講者の目が変わったと言いますか、明らかに食いつきが良くなったことを感じたのです。また、講演直後に、「もう口腔内スキャナ買います!」なんて言ってくれる受講者も多くなったように思います。もちろん、デジタルに興味を持っている会合に呼ばれているのもあるかもしれませんが、そもそもそのような会自体が少なかったので、これは確実にデジタルへの興味が高まっているのを実感している次第です。そして、私の講演を聞いて口腔内スキャナの購入を決めた!という先生の多くいらっしゃって嬉しいことですね。
そこで、現在私たちはデジタルによって大きな変革が起こる歯科の世界観として「歯科2.0」を構築しています。今回、デジタルヘルスケア学会でもその世界観も少しお話できればと思っています。平成が終わり新しい年号が制定される2020年を「真のデジタルデンティストリーの幕開け」と位置づけ、「歯科2.0」の世界観をこのブログでも少しずつお話ししていきたいと思います。
来年にはデジタルデンティストリーに関するサロンの立ち上げなども企画していますので、お楽しみに!

【発行責任者】三軒茶屋マルオ歯科 丸尾勝一郎
【医院概要】https://www.maruo-dental.com/

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