エビデンスブログ vol.4『最新の荷重プロトコル①』

こんにちは、エビデンスブログ編集長の丸尾勝一郎です。
今年は年初から講演や執筆の仕事が多く、エビデンスブログの更新が大幅に遅れてしまいました。申し訳ございません。

さて、第4回からは「インプラントの最新の荷重プロトコル」について、何回かに分けてお話したいと思います。

皆さんは、インプラント治療において、「抜歯から埋入まで」と「埋入から補綴装置装着まで」の期間をどのように決めていますか??

インプラント治療のデメリットにはご存知のように「治療費が高額である」「外科的侵襲がある」「時間がかかる」といったものがありますが、適応を守れば外科的侵襲を最低限にすることはできますし、治療期間も短縮することが可能です。ただし、それには継続的なエビデンスのアップデートや知識と経験に基づく技術が必要不可欠です。

今日は、そのうちの「治療期間を短縮する」ためのリテラシーを身につけていただきたいと思います。

インプラント治療における治療期間には分類がありそれぞれの定義があります。

抜歯からインプラント埋入までの期間を「治癒期間」といい、Type1〜4までの4つに分類されます。以下にそれぞれの定義を示します。(Hämmerle et.al,JOMI 2004)

Type1:抜歯即時埋入
Type2:軟組織の治癒完了時(4〜8週)
Type3:臨床的·X線的な抜歯窩の封鎖(12〜16週)
Type4:完全な治癒部位(16週以上)

Type1はいわゆる抜歯したその日にインプラント埋入をおこなう、抜歯即時埋入ですね。抜歯即時埋入では、抜歯窩より下方に初期固定が得られるだけの骨量があることが前提となります。また、抜歯窩とインプラントの間にはギャップが生じるので、骨補填材などを転入しギャップを埋める必要があります。さらに、できればプロビジョナルによる即時修復あるいはカスタムのヒーリングキャップを用いて、ギャップに填入した骨補填材が溢出しないようにする工夫が必要です。

Type2は軟組織が治癒した段階でインプラントを埋入します。抜歯即時埋入が難しい前歯部などが適応となります。当然、骨の治癒は完了していないので、骨造成を行うことが前提となります。一方で、軟組織のボリュームはこの時期を過ぎると減少してくので、審美領域など軟組織の欠損をできるだけ避けたい場合に選択されることが多いですね。

Type3はいわゆる抜歯後の骨の治癒がレントゲン的に完了した時点で、臼歯部などでもっとも一般的な埋入のタイミングとなります。抜歯時の炎症の大きさによっては完全に治癒していない、あるいは幼弱な骨で満たされている場合もあります。

Type4は抜歯から4ヶ月以上経過していて、完全に抜歯窩が治癒している部位を指します。骨の治癒は完了していますが、廃用萎縮による骨吸収が始まり、骨造成が必要なとなることもあります。

一方で、インプラント埋入から補綴装置を装着してインプラントに荷重をかけるまでの期間を「免荷期間」といい、どのように免荷期間を決定するかというのが、荷重プロトコルということになります。

荷重プロトコルは、2007年までは以下の4つに分類されていました。

即時荷重(修復)/Immediate Loading (Restoration):インプラント埋入から72時間以内
早期荷重/Early Loading:術後72時間から3ヶ月
通常荷重/Conventional Loading:下顎は3ヶ月以上、上顎は6ヶ月以上
待時(遅延)荷重/Delayed Loading:6ヶ月以上

確かに、昔は上顎と下顎で分けていたような記憶がありますよね。

しかし、2007年のコクランレビューにて、下記のように改定されました。(Esposito et.al.Cochrane Database Syst Rev. 2007)

即時荷重/Immediate Loading:インプラント埋入から1週間以内
早期荷重/Early Loading:術後1週から2ヶ月
通常荷重/Conventional Loading:2ヶ月以上

2007年以降、Delayed Loadingという定義はなくなりました。
この背景にはもちろんインプラント表面性状の改良というのが最も大きい要因だと思います。骨造成をおこなった場合はまた別として、現在では条件によっては上顎も下顎も2ヶ月で荷重をかけても大丈夫というのが、現在の定義となります。

いかがでしょうか?
闇雲に3ヶ月待ったりしていませんか?

以上のように、インプラント治療タイムフレームとしては、「4通りの治癒期間」と「3通りの荷重プロトコル」を組み合わせた12通りの方法があるということです。

ではどのようにこの組み合わせをすれば良いのでしょうか?

第5回の次回は部位や補綴様式によってどのような「治癒期間」×「荷重プロトコル」を選択するべきかをお話したいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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日時:平成31年3月3日(日) 14:00~16:00
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〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53
テーマ:『審美歯冠補綴治療のカッティングエッジ』
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【編集後記】
今年は日本の歯科界におけるデジタル元年になりそうな予感がしています。それは、デジタルの講演をしていて、口腔内スキャナへの関心が「興味」から「購入検討」に変わってきているからです。最近の講演では、「口腔内スキャナによるコストパフォーマンス」のスライドがものすごい勢いで写メを撮られています。笑

さらに今年は2年に一度開催される国際デンタルショー(IDS)がドイツはケルンで開催され、私も行って参ります。すでに、新型の口腔内スキャナが複数のメーカーから発表されるという情報もあり、口腔内スキャナのバリエーションの充実やオプション機能の追加が予想されます。残念ながら、日本では認可の問題もありすぐに購入できるようにはなりませんが、口腔内スキャナは比較的認可がおりやすい機器となっていますので、しっかりとリサーチしてきたいと思います。

また、個人的にはスキャンボディとフェイシャルスキャナにも注目しています。どちらも、現状の口腔内スキャナの課題を解決するための突破口となる可能性があり、その辺をいち早く臨床にも取り入れたいと思っています。

次回のメルマガでIDSのリポートもしたいと思っていますので、お楽しみに!

【発行責任者】三軒茶屋マルオ歯科 丸尾勝一郎
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